森づくりをしながら、人材を育成する トチギ環境未来基地

 都市と農村の共生・対流に関する優れた取り組みを表彰する「第14回オーライ!ニッポン大賞」表彰式が、3月3日(金)、帝国ホテル(東京都千代田区)で開催された。
 主催は、オーライ!ニッポン会議、農林水産省。

オーライニッポン表彰

表彰されるトチギ環境未来基地の塚本さん(右)、左は矢倉農林水産大臣政務官(クリックで拡大)

 当日は、オーライ!ニッポン大賞グランプリ(内閣総理大臣賞)1団体の他、大賞、審査委員会長賞、ライフスタイル賞の全11組へ表彰状が渡された。
 また、養老孟司氏の基調講演、語り部・かたりすとの平野啓子さんの語りに続き、受賞者の活動内容発表が行われた。
 表彰式のレポートは社会教育誌5月号に掲載予定です。
オーライ!ニッポン会議公式レポートはこちらへ

 “得る”Cafeサイトでは、グランプリを受賞したNPO法人トチギ環境未来基地(栃木県芳賀郡益子町)の活動を紹介します。

●オーライ!ニッポン大賞グランプリ
トチギ環境未来基地  @栃木県 益子町

自分の人生を切り開くことが、地域の役に立つ

2016年2月、里山づくりする若者 (クリックで拡大)

 NPO法人トチギ環境未来基地は、若者の力で森づくりや里山の整備を進めながら、次世代を担う人材育成を目指している。
 オーライ!ニッポン大賞表彰式の後、檀上に上がったトチギ環境未来基地の塚本竜也理事長(40歳)は、同NPOを設立した経緯や活動内容について語った。

 塚本さんは大学卒業後、1999年にアメリカで行われているConservation Corps(コンサベーション=保全・コア=隊)というプログラムに半年参加。このことが、NPO設立のきっかけだったそうだ。
 Conservation Corpsは、若者が1年間チームを組み、寝食を共にしながら環境保全活動に取り組むプログラム。

2015年11月、竹林を整備(クリックで拡大)

 活動することで、さまざまな作業ができるようになるだけでなく、仲間と共に働くことで人としても成長していく。
 さらに、貧困のために大学に行くことができない人が同プログラムに参加して1年間地域のために活動すると、大学に行くための給付型の奨学金がもらえるという制度がある。
 「自分の力で自分の人生を切り開いていくことが、地域の役に立つことにつながっているのはすごいと思った。こういうものを日本でつくりたいと思ったのが出発点です」と塚本さん。

寝食を共にしながらの滞在型プログラム

2015 年9月、遊歩道をつくった(クリックで拡大)

 現在、3か月の滞在型プログラムを年間2、3回行っている。日本の若者だけでなくアジア(フィリピン、インド、ベトナムなど)の若者も一緒に生活しながら活動している。
 内容は、若者4~6名がチームを組んで行う環境保全活動や、地域貢献活動など。荒れた里山の整備を行う人材が不足している中山間地域に、活動できる若者たちがいつもいるという仕組みづくりを目指している。

 平成21年に第1回目のプログラムを開催した後、3か月間のプログラムを全15回実施。これまで61人の若者が参加した。この結果、6人が栃木県に移住した他、21人がNPOに就職して、林業や若者支援、環境の仕事に携わっている。

 また、長期プログラムに参加する若者が中心となり、企業、ボランティア、若者自立支援団体に里山保全の活動機会を作っている。
 週末、平日の1日ボランティア、週末の1泊2日ボランティア活動を行い、7年間で1万3千人を超える人が参加した。
 
里山を整備しながら、市民と交流する

 現在、トチギ環境未来基地は、栃木県の芳賀郡や、宇都宮郊外を中心に8つの里山フィールドで活動している。

2014年10月、子どもと一緒に自然体験(クリックで拡大)

 市貝町では廃校になった小学校の裏山を、プログラムに参加する若者が主体となり、子どもたちや地域の人々と共に整備して、「希望の丘」をつくった。
 現在、この丘で家族向け、子ども向けのイベント、学習プログラムを行っている。また、学童保育の森としても活用されている。

 益子町にある福祉施設、美里学園の裏にある森を整備して、里山ひろば「美里学園の森」をつくった。森の中で、施設や地域の人が一緒に遊べるイベントを開催している。

 「施設が持っている森を整備したら、たくさんの人が森に来てくれるようになった。その中で障害者に話しかけたり、接点もできると思います。若い人の力で、里山の価値を再定義したいと思っている。今の日本において、里山の大切な使い方があるんじゃないかと思っています」

2016年5月、竹林を整備する女性参加者(クリックで拡大)

森の中で活動することは、未来をつくる時間

 最後に塚本さんは次のように締めくくった。
「このプログラムは、若者の次のステップにつながっています。森の中で体を動かしながら考えることは大切で、自分の生き方や大事にしたいことを考えたり、暮らし方のイメージを育んでいると思います。
 実際、ボランティアなどでプログラムに参加してくれた人の中から、栃木県に移住してきた若者は6人になりました。汗を流して森の中で活動することは、未来をつくる時間だと感じています」

 表彰式の後、取材に応じてくれた塚本さんは、今後の目標について次のように話してくれた。
「目指しているのは、若い人が里山を守って次の世代に渡していくこと。また、ここから巣立っていったメンバーが、各地でNPOなどで活動してほしいです。今後、アメリカのConservation Corpsのように、いろんな人がこのプログラムを利用できるようにしていきたい。そして、ここで活動したことが、ひとつのキャリアパスになるといいと思います」
 里山保全がキャリアパスに。塚本さんの夢はどんどん広がっている。

トチギ環境未来基地のサイト

(まとめ:“得る”Cafe事務局 いとう啓子、写真提供:トチギ環境未来基地)

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