「『ドキュメンタリー演劇』の挑戦」 同著は、岐阜県可児市で2008年から2012年に行われた多文化共生プロジェクト「ドキュメンタリー演劇」についての記録だ。
 内容は、上演された台本、制作に携わったアーティスト、スタッフと参加者、視聴者からの寄稿で構成されている。
 ちなみに、「ドキュメンタリー演劇」とは、現実の社会で起こった出来事を演劇の中に取り入れる手法のこと。

 このプロジェクトでは、地元の在住外国人や日本人が自ら実体験を語ったり、歌やダンスなどを物語の中で披露した。
 例えば、シェイクスピエアの「真夏の夜の夢」のストーリーの中に、ブラジルから来た性同一障害の人の告白シーンがあったり、知的障がいの人がダンスを披露したり、みんなで歌ったり、出演者はさまざまのパフォーマンを舞台でみせていった。
 
 このような演劇手法を使った多文化共生プロジェクトは、日本ではほとんどない。そのため、演出家をはじめスタッフ、出演者も手探りの中で作り上げていった。
 ときには落ち込んだり、戸惑ったり、涙したり。
 台本から想像する舞台の面白さだけでなく、作品発表にいたるまでの物語もとても興味深い。演じる人やスタッフのそれぞれの思いが語られていて、まさに“ドキュメンタリー”となっている。

 著者の田室寿見子さんは書いている。
 「一人ひとりの持つ個性や思いを最善の形で引き出し、「持ち味」、すなわち他に代え難い魅力へと変換されたときにこそ感動が生まれ「同情」ではなく「敬意」によって多文化共生が促進されるのではないでしょうか。」

 同著は、社会教育関係者、演劇関係、多文化共生に関わる人たちだけでなく、生きづらさを抱える多くの一般の人にもいろんなヒントを与えてくれると思う。
 多様な人が接するとはどういうことなのか、人が自分らしく生きるとはどういうことなのか、改めて考えさせられる。

 編集者は「日々の暮らしの中に、他者を攻撃するのではなく、また自分を押し殺すのでもなく、どうしたら自分らしく生きることができるのかを探求する人にとって、その手がかりになることを祈っています」と記している。

「ドキュメンタリー演劇」の挑戦
多文化・多言語社会を生きる人たちのライフヒストリー
松井かおり 編著/田室寿見子 著
成文堂 2017年3月20日発行 A5判並製 306頁
税込定価 3,240円(本体3,000円)

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岐阜県可児市で行われた
フィリピンと日本の青少年向け演劇ワークショップ
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