夢スピーチコンテストを通じて
若者たちの「資金」と「意欲」をサポートするカナエール
児童養護施設を出た後、奨学金を支給
NPO法人ブリッジフォースマイルが行っている「カナエール」は児童養護施設などを退所した後、専門学校や大学等へ進学する子どもたちを支援する奨学金支援プログラム。
夢や進学への思いを語るスピーチコンテストの出場を条件に、返済不要の奨学金を、寄附や補助金、コンテストのチケット販売を原資に給付する。
コンテストにエントリーすると、参加者は120日間スピーチコンテストに向けて3人の社会人ボランティアとチーム(エンパワチーム)を組み準備していく。
カナエールの特徴は、「資金」だけでなく、スピーチコンテストを通じて「意欲」もサポートすることだ。
同法人では、2011年よりカナエールのプログラムをスタートし、これまでに大学等へ進学した奨学生96名に毎月3万円の返済不要の奨学金を届けている。
また、コンテストの後も、交流会や定期面談を実施。エンパワチームらが彼らを見守り続けることで、卒業までの長い期間を支えていく。
そして、国による公的支援が大きく前進してきたことから、同法人はこのカナエールプログラムを今年で終了し、今後は新たな支援を行っていくそうだ。
満員の観客に前向きなメッセージを届ける
最後のカナエール2017夢スピーチコンテストが、7月に横浜、東京、福岡で開催された。
7月1日に東京で行われたスピーチコンテストを取材した。
当日、会場にはほぼ満員の約700名の観客が集まり、全10名のカナエルンジャー(参加者)の語る5分間の夢スピーチに聞き入った。参加者は、個人情報保護のためにニックネームで呼ばれる。
夢スピーチの前には、エンパワチームが制作したカナエルンジャーを紹介する3分ビデオが流され、より現実的に彼らの日常が伝わってきた。
そして、会場に集まった観客の投票によりグランプリが決められた。見事にグランプリに選ばれたのは、母親の暴力に苦しみ児童擁護施設に入所し、美術の先生との出会いから立ち直り猛勉強。国立大学に受かったという女性だった。
彼女だけでなく、カナエルンジャーたちのスピーチは、聞く人の心に響く内容で、何度も目頭が熱くなった。夢を語るだけでなく、集まった人たちに「がんばって生きよう」という前向きなメッセージも届けていた。
スピーチ・コンテストの後は、ガーナ出身で児童養護施設で生活した経験を持つラップスタイルのヴォーカルユニットYANO BROTHERSが美しい歌声を披露し、イベントに彩を添えた。カナエルンジャーだけでなく会場全体に、夢を見ることの素晴らしさを歌で伝えていた。
(取材:“得る”Cafe事務局 いとう啓子)