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アートの力で障害を持つ人も持たない人も元気にしたい


アールブリュット東京コレクション
アートの力で障害を持つ人も持たない人も元気にしたい

 最近、「アール・ブリュット」という言葉をよく耳にしませんか。
フランス語で「生(き)の芸術」を意味し、専門的な美術教育を受けていない人が自発的に創作した作品の総称です。

作者が直接バッグに絵を描いた貴重な一点もの。クリックで拡大

 “得る”Cafeでもこれまで3回、和歌山県御坊市に拠点を構えるNPO法人ワークス・アールブリュット推進協議会の活動についてお知らせしてきましたが、今回は、同協議会が東京渋谷で7月28日(金)から31日(月)の4日間開催した「わわわアールブリュット東京コレクション」の様子をお伝えいたします。
(阿部佳代子 フリーランス編集者、“得る”Cafe事務局)

東京オリ・パラに向けて注目が集まる

小さなブティックのような東京コレクション会場。クリックで拡大

 渋谷にある東急百貨店本店の前を通り抜け、そのまま小田急線代々木上原駅に向かってしばらく歩いていくと、渋谷の繁華街とは趣を異にする住宅街の中の小さな商店街、神山商店街の庶民的で静かな通りとなります。

 ところどころに小さくて洒落たレストランや雑貨屋さんなどが並ぶ一角に、その会場セラッチ・ジャポンショールームがありました。

西尾亜子理事がディレクターを務めるククアフリカンの製品。売り上げの一部は協議会に寄付される。クリックで拡大

 中に入ってみると、鮮やかな色のさまざまなイラストが描かれたTシャツやトートバッグ、雑貨や文具、さらにポップで躍動感溢れるアフリカを感じさせるテキスタイルで作られたドレスやバッグ、人形やアクセサリーなどが並ぶ小さなブティックのような空間です。絵画や彫刻などが飾られたギャラリーを想定していたので、逆にわくわくと楽しい気持ちになりました。

「わわわアールブリュット東京コレクション」の「わわわ」には、“わかやまからワールドにつながる輪をつくる”との思いと制作者が作品を創作するときに発する歓声が表現されています。

 

今回初めて製品化されたクッションやキッチン雑貨類。クリックで拡大

アール・ブリュットは、フランス人画家ジャン・デュビュッフェ(1901~1985)が従来の西洋美術の伝統的価値観、社会的慣習などから解放された新たな価値を持つ芸術作品を認めようと、第二次大戦後まもなくの1945年に提唱した概念です。

以来、欧米を中心に注目されてきましたが、日本では障害者福祉の充実、ダイバシティー(多様性のある)社会の実現を芸術・文化の面から後押しするといった側面から障害者による芸術作品という捉え方で紹介されることが多いです。

最近では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、小池百合子東京都知事が、今秋、都のギャラリー「トーキョーワンダーサイト(TWS)渋谷」を再整備してアール・ブリュットに特化した展示拠点を設けると発表して話題となりました。

アールブリュットをファッション・アイテムに

それほど多くはなかったが、原画も販売されていた。クリックで拡大

「わわわアールブリュット東京コレクション」は、2013年、和歌山県御坊市の御坊・日高障害者総合相談センター多目的ホールを借りて障害のある児童から高齢の方まで対象とした「あーとの教室」をスタートさせ、15年にNPO法人となったNPO法人ワークス・アールブリュット推進協議会(以下、アールブリュット推進協議会)が開催する15年12月に続く2度目の東京での展示会です。

 地元和歌山や大阪で開く展示会と異なり、作品の発表の場というより、作品を実際に製品化して見せることで、新事業の開拓やCSRに関心を持つ企業やクリエイターへの認知度を高め、新たな販路の開拓や、一緒に新製品を開発する提携先を見つけることが大きな目的と、代表理事の玉置徹さんは語ります。

 

作品をプリントしたTシャツやドレス。クリックで拡大

今回は、Tシャツやドレスなどのクローズ、バッグ、キッチン、インテリア、文具や雑貨、ギフトなど6つの分野の製品を提案しました。この東京コレクションでの反応や評価を踏まえ、来秋にはフランス・パリで4度目のコレクションを開催するための準備が進んでいるといいます。

障害者の能力を収入につなげる

 アールブリュット推進協議会は、御坊市と大阪市で「わわわ学園・あーとの教室」を運営するほか、国内外でアール・ブリュット作品を紹介し、販売やレンタルにつなげる展示会、作品をデザインとして製品化するデザイン・プロダクツ事業を展開し、昨年5月には活動拠点として御坊市に「倉庫ミュージアムWAWAWA」をオープンし、運営しています。

客に古川副代表理事が作者の作風や素材の特色などを説明する。クリックで拡大

 この「倉庫ミュージアム」は「あーとの教室」の会場、いわば作品の工房として、またギャラリーとしての機能を果たしているほか、飲み物や料理を提供するカフェバーも運営することで、アール・ブリュット作者と地域の一般のお客さんとの交流の場にもなっているとのことでした。

 「アートを通じた障害者支援の試みは、ここ数年ずいぶん増えてきましたが、私たちの組織の活動は少し立ち位置が違います。

 障害者支援を福祉の枠組のみで捉えるのではなく、障害のある方の持っている能力を引き出しマーケットにつなぎ、収入につなげることで、彼らに自己肯定感を持ってほしい。それは彼らの生きる喜びにつながり、社会ともつながって、一般の人たちの喜びにもつながると思うんです

 代表理事の玉置さんはこう語り、作者と作品の著作権に関する契約を結び、作品の販売、デザイン化、製品化に際しては販売金額に対して30%から50%の著作権料を支払うという同協議会の収益を作者に還元する仕組みを説明してくれました。

ユニークな事業モデルを支える多様な逸材たち

 ユニークな事業展開を行う同協議会を支えるメンバーたちのプロフィールは、代表理事の玉置さんはじめ実にバラエティーに富んでいます。

左から古川新十郎副代表理事、玉置徹代表理事、西尾亜子理事。クリックで拡大

 玉置さんは学校を卒業してから20年間、繊維メーカーのユニチカで素材開発、商品企画、トレンド分析などの仕事に携わってきました。素材だけではなく、商社やアパレルメーカーと連携して川下のデザインや商品開発なども経験するなかで、高齢者の褥瘡を和らげるための素材の開発の仕事に携わることになり、福祉の知識を得るため夜間の専門学校に通ってヘルパーの資格を取得したことが大きな転機となったといいます。

 その後、他の社会福祉法人にて障害福祉の仕事をしながら、前職の経験や人脈を活かせるアールブリュット作家の発掘育成支援の事業モデルを模索、アールブリュット推進協議会を設立し、一歩ずつ事業を拡大してきました。現在も、同協議会の代表理事と社会福祉法人の障害福祉相談員の二足のわらじを履き続けています。

こちらも初めて製品化された紅茶などギフト製品。クリックで拡大

 同協議会設立当初から玉置さんと二人三脚で活動し、現在は倉庫ミュージアム館長、カフェバーのシェフも務める副代表理事の古川新十郎さんは障害福祉、高齢者福祉の法人で仕事をしてきた福祉のプロフェッショナル。

 大阪での「わわわ学園・あーとの教室」を支え、「わわわアートブリュット奨学基金」の会長も務める理事の一人、西尾亜子さんは、日本におけるセレクトショップの草分け的存在のブティックの代表を務め、現在も「ククアフリカン」というブランドのディレクターとして収益の一部を同協議会に寄付するなど、同協議会の活動を経済的にも支えています。

 今回はお会いできませんでしたが、残る二人の理事のうち、一人は臨床心理士、もう一人はジュエリーデザイナーと、福祉の世界とファッション業界の担い手が、それぞれの経験や知見を持ち寄ってアールブリュット推進協議会の活動を展開していることがわかりました。

布製のトートバッグなどバッグ類。クリックで拡大

「和歌山県でのアール・ブリュットの認知度は、障害のある児童の教育で知られる『近江学園』や『ボーダレス・アートミュージアムNO-MA』がある先進地域・滋賀県などと比べるとまだまだ低いですが、今年奈良県で一体開催される文化庁の『国民文化祭』と厚生労働省の『全国障害者芸術・文化祭』が2021年には地元和歌山県で開催される予定です。私たちもぜひ貢献したいと思っています」と語る玉置さん。これからもその活動に注目していきたいと思います。

わわわ学園のサイト

過去の“得る”Cafeの紹介記事
注目の芸術「アールブリュット」の作品展示会@渋谷

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