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学校図書館がコミュニティ空間へ 神奈川県立 田奈高校「ぴっかりカフェ」

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学校図書館を、子どもが社会とつながるコミュニティ空間へ

公立高校にある新しい居場所「ぴっかりカフェ」

●ざっくりいうと・・・

 

*ぴっかりカフェの入り口

・ぴっかりカフェは生徒にとって“楽ちん”な空間
 ・図書館で飲食。タブーを破る
 ・外部スタッフと協力して子どもを支援する
 ・文化的シャワーと情報リテラシー教育
 ・いい空間を作るには、ハードルは高い! 
 ・目標は、持続可能なカフェへ


 校舎の一隅にある「ぴっかりカフェ」という看板のところを入ると、他の校舎内とは違う空気が満ちていた。
 ポップスが流れ、子どもたちがお菓子を食べたり、雑誌を読んだり、ソファに座ってくつろいだり、リラックスした時間を過ごしていた。

 ここは、神奈川県立田奈高校の図書館で2014年12月から週に1回行われている「ぴっかりカフェ」。学校司書の松田ユリ子さんが理事の一人も務めるNPO法人パノラマ(代表理事 石井正宏)が、クラウドファンディングなどで資金を集めて運営している自主資金事業だ。

 ぴっかりカフェに来た生徒は、楽しい時間を過ごすだけでなく、さまざまな相談ができるようになっている。ユースサポートを行っている専門家が入り、子どもたちとコミュニケーションをとりながら、さまざまな相談に応じている。

 もはや学校図書館という場所ではなく、まったく新しいコミュニティ空間。居場所、さまざまな人や文化と出会うところ、相談できる場所…。
 今、全国的に注目されているぴっかりカフェをレポートする。

<追記>2018年3月 松田ユリ子著「学校図書館はカラフルな学びの場」発売
紹介記事はこちらへ

“楽ちん”な空間

*子どもたちはリラックスして過ごす。

 木曜日のお昼12時から16時まで、ぴっかりカフェはオープンしている。平均して150人以上、多い時には300人を超す生徒たちがカフェにやってくる。家に帰りたくない、バイトまでに時間がある、本や雑誌などを読みたい、友人とおしゃべりしたい…、さまざまな思いで集まってくるそうだ。

 そして、ユースサポート、ボランティア、卒業生などの外部の大人たちと交流できることが、この図書館の存在感を多角的なイメージに変えている。社会のいろんな人と接触できる場であり、問題を抱えた生徒にとっては相談できる場所でもある。

 相談所とはどこにも書いてないから、表向きはまったくわからない。生徒は友達とゲームをして過ごしてもいいし、ひとりで本を読んでもいい。
 通常、学校のどの部屋も、何かをする場所になっている。勉強する教室、スポーツする体育館、先生がいる職員室など。

 ぴっかり図書館には、何かをする場所という決まりがないから、生徒たちはとてもリラックスできるのだろう。
 教室2つ分ほどの小さな図書館は、生徒にとって誰にも何も指示されない“楽ちん”な空間なのだ。
 
●図書館で飲食。タブーを破る
 

*ゲームしたり自由に過ごす生徒たち

 田奈高校では、カフェの開店をきっかけに、図書館での飲食を解禁した。カフェの飲食物については、図書館外への持ち出しは禁止されていて、生徒たちは図書館内だけで飲食する。また、衛生面を考えて、飲み物のカップは使い捨てで、お菓子の包装紙などのゴミはしっかり片付けるようにカフェのルーティーン作業に組み込まれている。

 一般的には、図書館では飲食禁止の場合がほとんどだ。

 そもそも、なぜ図書館内では飲食禁止なのか? 室内や本が汚れるからというのが最大の理由と考えられる。貴重な資料を保存する使命を持った図書館なら当然のルールだが、学校図書館はどうだろう? 学校図書館は資料の保存よりも利活用を旨とする図書館だ。
実際、図書館の整理室では司書や図書委員が資料に囲まれて昼食をとる、また生徒は借りた本を自宅などで飲食しながら読むこともあるだろう。

 松田さんは、掟破りともいえる図書館で飲食するということに30年以上向き合ってきた。朝食や昼食をとる場所がなく、トイレで食べる生徒に出会ったことが原点だ。それなら図書館で食べれば?と誘った。しかし、一番の壁は、図書館はすべて飲食禁止だと思い込んでいる大人の既成概念だったという。

 

学校司書の松田さん

 松田さんは教室でお弁当を広げる勇気がなく校内をさまよっている女生徒をみかけて、図書館の整理室に誘ったこともあるという。この女生徒は、親しい友人が休んでしまい、教室でひとりで食事をする勇気がなかった。どこで誰と昼食をするのかというのは、生徒たちにとって大問題なのだ。

  田奈高校ではひとりで食べる場所、ランチルームも作っているそうだが、十分とは言えなかった。ぴっかりカフェができたことで、生徒はお弁当を食べる場所について悩むことが減った。さらに言えば、カフェの飲食物で図書館の資料が汚れたことは、これまでなかったそうだ。

学校司書の松田ユリ子さんのインタビュー記事はこちらへ
 
●外部スタッフと協力して子どもを支援する

 ぴっかりカフェでは、NPO法人パノラマの石井正宏代表理事やスタッフ、市民や学生のボランティアが、生徒を支援している。
 取材にうかがった日、石井さんはデニムにTシャツといういでたちで、隣のお兄さんという雰囲気で生徒たちと会話したり、飲み物を配ったりしていた。いわゆる相談員というイメージはまったくない。子どもたちは、気楽に雑談したりしていた。

NPO法人パノラマの石井さん

 特に、10代は感受性が強く、話せる人と話せそうにない人を一瞬で判断する。石井さんは、常にウェルカムな空気を漂わせていた。

 例えば、学校内に相談室を作っても、子どもは行きにくいだろう。誰でも入れる図書館で支援者に会えることは、生徒にとって楽に違いない。しかも、何か相談しているということを他の人に知られないですむ。

 実は、多くの学校司書は課題を抱える子どもたちへの対応に苦労しているという。教師とは違うスタンスで居る学校司書は、相談を持ちかけられやすいのだ。しかし、発見してしまった問題の解決までの仕組みがない場合が多い。図書館にユースサポートがいることでこの仕組みができ、松田さんは、学校司書仲間からうらやましがられるそうだ。

 「問題をこじらせる前に、子どもと仲良くなって、ガスを吐き出させてあげれば大丈夫な子もいっぱいいるわけです。予防的にガス抜きをしていたんですが、それ以上は何もできなかった。それが今は、こういう子がいるんだけどとすぐ相談できる。子どもの事で何かあったときに、校内外の必要な大人につなげることができる。こういうしくみは、どの学校でも必要としていると思う」と松田さんは語る。

 教員もぴっかりカフェにやってくるそうだ。彼らは生徒たちが抱えている家庭問題などの専門家ではないにもかかわらず、精一杯の支援を行っている。お手上げ状態になって手遅れになる前に、ぴっかりカフェに行けば専門のユースワーカーにすぐに相談できる。

 そして、松田さんたちは、教員と子どもの情報を共有し、連携して支援している。
 「教師とつながっていないとできないです。一緒にやるために、先生方にもいっぱい来てほしいし、先生方も外部の支援者を使って仕事をやりやすくしてほしいです。どっちも子どもたちを支えるためなんです」と松田さんは語っていた。

2ページ目に続く…

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