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学校図書館がコミュニティ空間へ 神奈川県立 田奈高校「ぴっかりカフェ」

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●文化的シャワーと情報リテラシー教育

 ぴっかりカフェでは、音楽が流れる中で飲食を楽しみながら、書籍、文庫、雑誌やマンガなどを読むことができる。音楽も、ヒップホップ、ロック、ポップスなど、子どもたちが日ごろ聞いている曲が流されている。インターネット接続できるパソコンもあり、さまざまなサイトで情報を得ることもできる。

マンガや雑誌も置かれている。

 さらに生徒は、支援者やボランティア、見学者、筆者のような取材者など、外部の大人とも会話できる。ここで様々な価値観や文化(ヒト・モノ・ コト)と出会う。
 実際、筆者も取材時に何人かの生徒と会話を楽しんだ。

 このようにカフェで子どもたちが受ける体験を、松田さんは「文化的シャワー」と呼んでいる。
「生徒に文化的シャワーを浴びせることは、生徒の予防的支援の観点からだけだけでなく、学校図書館が担うべき情報リテラシー教育の観点からも必要なこと」と述べている。

 さらに、“教えない”情報リテラシー教育についても指摘している。
 「コミュニティで自然と問題解決能力が育まれるような環境づくりそのものも、情報リテラシー教育のひとつの方法と考えるべき」と述べている。(横浜市立大学 平成27年度教員地域貢献活動支援事業報告書より)

 「石井さんみたいな人と出会って、どうすればいいか教わる。教室で教わるのとは違うんです。経験的に学んでいくことも含めているんです。問題解決の方法を学ぶ場所にもなっていると思います」と語った。

●いい“空間”を作るために

 子どもにとって、いいことだらけのぴっかりカフェ。他の学校でも同じような図書館を作ればいいと考えてしまうところだが、実際はかなりハードルが高い。コーディネートしている松田さんは説明してくれた。

*楽しい空間をコーディネートすることは容易ではない。

 理由としてまずは、学校司書を専任正規で置いている自治体が多くないことがある。非常勤などのポジションで学校図書館に入っていると、学校のポリシーに合っていて、かつ革新的なしくみを立ち上げるのは難しい。

 また、学校に外部のサポートを入れることは一般的ではない。田奈高校では、学校側がユースサポートを校内に入れるという方針を打ち出したことからスタートしている。

 仮に外部のサポートを入れても、学校図書館で子どもたちと知り合うことから始める交流相談を実施できるポリシーとスキルが必要になる。

 多くの生徒たちと交流しながら、その中から支援が必要な生徒とうまくコミュニケーションをとったり、適切な支援につなげたりすることには、高い専門性が求められる。ぴっかりカフェは、NPO法人パノラマのスタッフの力量に負うところが大きい。

 さらに難しいのは、雰囲気作りだ。音楽をかけて飲食を解禁すれば、ぴっかりカフェのような場所ができるわけではない。単なるたまり場ではだめなのだ。みんながリラックスして、素の自分を出せる“空気”を作るのは、日常の学校図書館で、場所の雰囲気づくりを重ねることが必要だ。

「いい空気っていうのはその場かぎり。たまたまそこに居合わせた人たちの関係性だと思うので、それをどうコーディネートするのかが日常の学校司書の大切な仕事だと思っている」と松田さんは語る。

 飲食や音楽、好まれる書籍、ユースサポートと、形を整えてもいい“空気”はできない。今そこにいる人たちの関係性をコーディネートするという、学校図書館のポリシーとスキルが必要なのだ。
 
持続可能なカフェへ

 ぴっかりカフェのような活動を持続可能にするのが、松田さんの今の目標だ。

 今では、ぴっかりカフェの存在意義については理解されているが、どうやったらそのような図書館ができるのかについては、まだ言語化されていない。松田さんが独自に切り開いてきただけに、マニュアル化への要望もあるそうだ。

 「誰にでもできるようなマニュアルを作るべきだとよく言われる。ノウハウの伝承は必要だと思いつつ、マインドをどう伝えるかというのはマニュアルじゃないという気がする。目的は、子どもの課題解決の支援なので、カフェという方法にこだわる必要もないですし」

 「持続可能にしたい。あの人だからできるというのは、むしろネガティブな評価ですよね。持続可能な仕組みづくりのために、現在カフェの成果指標を作り始めています。量的なものだけでは捉えきれないので、質的な方法も考える必要があると思っています」と松田さん。

公共図書館と、学校図書館はだいぶ違う

 今回、取材して初めて分かったが、学校図書館と公共図書館は特性がかなり違う。最大の違いは、毎年生徒の3分の1は替わっていくこと。つまり来る人が、どんどん替わっていくわけだ。

 毎年、新しい人への対応が求められるし、地域性も学校文化もある。
「ここと同じようにやっても、例えば、別の地方の超進学校だったらうまくいかないと思います」と松田さん。

 「公共図書館とは働きが違うんです。国会図書館なら、資料の保存をきっちりしないとだめなんです。学校図書館は、情報のストック(保存)よりもむしろフロー(活用)を重視する必要がある。学校図書館は、情報の新陳代謝を止めないことが基本の仕事です。社会の状況も変わっていくし。学校図書館の情報環境を、生徒や彼らを支える教職員のニーズに合わせていく必要があるんです。」

 ほとんどの学校で、図書館は受験勉強したり、本を借りるだけの場所となっている。魅力ある情報空間になっているところは多くはないだろう。
 しかし、学校図書館が、生徒と学校と社会をつなげ、彼らを支援する場所にもなりえるということを、ぴっかりカフェは証明している。

(*写真 松田ユリ子さん提供)
(取材・まとめ “得る”Cafe事務局 いとう啓子)

 

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