●ざっくり、こんな内容です・・
・スポーツを通じた『積極的平和主義』とは
・トップアスリートが行う難民支援から見えてきたもの
・スポーツから生まれる「つながり」はメダル以上に大事
・国際貢献事業『スポーツ・フォー・トゥモロー』について
・途上国などへのスポーツ援助の後、何が起こるのか?
・スポーツは人類共通の文化
成蹊大学(東京都武蔵野市)で公開シンポジウム『スポーツと国際貢献を考える-「競うこと」と「つながること」の先へ』が2017年11月25日に開催された。
当日は、大学生や一般の参加者を約100ほど集めて行われた。
その概要をお伝えする。
詳報は、「社会教育」誌に掲載する予定です。
このイベントの告知ページ
基調講演
戦後アジアの夏季オリンピック開催と「東京2020」の課題
講演者 菊 幸一(筑波大学大学院人間総合科学研究科教授)

筑波大学大学院人間総合科学研究科の菊教授
最初に登壇して菊先生は、1964年の東京オリンピック以降、1988年のソウル、2008年北京とアジアで開催されたオリンピックの社会状況を説明した。
これまで日本、韓国、中国で開かれてきたオリンピックにはインフラの整備、国民意識の喚起など、共通するテーマがあった。
このことを踏まえ、菊先生は「2020年のオリンピックのテーマはよく分からない。ミッションが見えない」と訴えた。
そして、2020年の東京五輪の課題として、次のように語った。
「スポーツを通じて、多様な人がつながることができる。平和があるからスポーツがあるんじゃなくて、スポーツが平和を作っていくことを考えてほしい。2020年のオリンピックが、スポーツを通じた『積極的平和主義』の礎になることを期待したい」

テレビ朝日スポーツコメンテーターの宮嶋さん
トップアスリートが行う難民支援から見えてきたもの
講演者 宮嶋 泰子 (テレビ朝日スポーツコメンテーター・国連 UNHCR協会理事)
テレビでのおなじみの宮嶋さんは、バレーボールのオリンピック選手と共にネパールの難民キャンプへいった話を紹介した。
現地の人たちと難民キャンプの人たちの関係はよくなかったが、一緒にバレーボールを楽しんだことで様子が変わったそうだ。
また、日本のオリンピック選手は、初めてバレーボールが人の役に立ちうれしかった、初めてバレーボールをやって楽しかったと語ったそうだ。
選手とネパールの人、難民の人たちが一緒にスポーツを楽しんだことが、意外ないい効果をもたらしたことを話していた。
金メダル競争から経験する「つながり」の価値-スポーツと支援の関係について
講演者 田知本 遥(リオデジャネイロ五輪女子柔道 70kg 級金メダリスト・ALSOK)

リオ五輪 柔道 70kg級金メダリスト、田知本さん
リオデジャネイロ五輪の金メダリスト、田知本さんは、現地で他国のメダリストたちと一緒に撮った写真を紹介。いろんな人と交流できたことが、メダル以上にうれしかったと話した。
また、青年海外協力隊の柔道隊員としてボツワナに赴き、事故で亡くなった元同僚の井坪圭佑さんことを話していた。
現地で子どもたちに柔道を教えていた井坪さんの存在は、今も人々の心に残っているそうだ。
「スポーツの競い合いで生まれるつながりや、スポーツを通じた支援の中で生まれるつながりは、金メダル以上に大事なことです」と語っていた。
政府が主導する国際貢献事業『スポーツ・フォー・トゥモロー』について
講演者 河原 工(日本スポーツ振興センター Sport for Tomorrowコンソーシアム事務局ディレクター)

Sport for Tomorrowコンソーシアム事務局ディレクター、河原さん
「スポーツ・フォー・トゥモロー」について河原さんは話した。
これは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年までに、官民連携のもと、開発途上国を中心とした100カ国・1000万人以上を対象に推進されるスポーツ国際貢献事業だ。
河原氏は、2020年以降も、スポーツを通じた国際協力・交流が続くことが大事だと語っていた。