キャンプ体験が「生きる力」を育む!
作者の梶恵一さんは、東京下町の深川生まれ。商社勤務をやめて27歳から2年半、青年海外協力隊としてスリランカで活動したという経歴の持ち主だ。
スリランカで毎日がキャンプ同然の生活を送り、日本に帰国。その後、30年間、会社の人事の仕事に携わりながら、地元江東区で青少年指導員としてジュニアリーダーの育成に携わっている。
ジュニアリーダーとは、子どもたちの自主的な活動を下支えるするリーダー的な役割を担う人のこと。
キャンプにおけるジュニアリーダーの経験は「社会人基礎力=生きる力」を育むよい機会だと梶さんは言う。
同書はキャンプのノウハウ本ではなく、キャンプ体験がいかに人を育てていくかを説いている。

スリランカの文字を書いて見せる梶さん
キャンプのよさというと、自然に親しむ、仲間と協力する、サバイバル体験を学べるなどを思い浮かべるが、そういうことだけを書いているわけではない。
もっと踏み込んで、キャンプ体験は変化の激しい社会を生き抜くための能力を育むと梶さんは書いている。
「昔は、学校においてはテストで素早く正解を出せる人、そして正解ある難問を次々と解答する『情報処理』スピードの速い人が優秀と称され、その優秀と称された若者がお役所や大企業に入っていきました。
しかし、優秀と称される人のモノサシや質は大きく変わっていることに、私たちはもっと気づいても良いのではないでしょうか?
日進月歩の変化と多様化の世の中です。正解は一つではないことを前提に、正しい解答ならぬ、その時々の状況に合わせた、みんなで納得しあえる解答…つまり「情報編集」による納得解を見出してゆく力が求められています。その力は机の上では決して身につけることができないものです。」(同書より引用)
↑プレゼンの頭の部分。腰からスリランカの民族衣装を着る梶さん。
この本を読んだら、子どもたちだけでなく、大人もキャンプ体験することで改めて発見できることが多いのではないかと考えさせられた。
また、同書はキャンプ体験のすばらしさだけではなく、梶さん自身のスリランカ体験談や、その後の地域活動、人事担当としての経験談も紹介している。
ジュニアリーダーから立派な社会人へと成長していった子どもたち、人事担当として30年間で感じたことなどを振り返っている。一般的に3年離職率が約3割というなかで、梶さんの会社では新卒社員の離職率が2.5%だったそうだ。
同書は、梶さんのキャンプへの熱い思いが語られているだけでなく、成長する子どもや若者と寄り添ってきた梶さんの熱血物語としても楽しめる。
(“得る”Cafe事務局 いとう啓子)
「ホップ ステップ キャンプ-地域で育む「生きる力」-」
みらいパブリッシング (2018/10/2)
単行本 四六判 ソフトカバー 232ページ
1500円(税抜き)