第20回「お金の不安編」その10「社会環境の変化にそなえる」

年金は目減りする

 今年1月18日の日本経済新聞の夕刊1面に「年金抑制策、4年ぶりに実施」という記事が掲載されました。
 「年金支給額の伸びを抑制するので、年金は実質目減りする」という主旨です。

 いよいよ少子高齢化の影響が、老後の生活を支える年金に及んできました。

少子高齢化に向けて

 今、急速な高齢化と少子化が、同時に進んでいます。
 少子化の影響により、働き手が少なくなり、年金保険料を支払う働く人の負担が増えるのではないかと危惧されています。

 一方では、多くの人が長生きするようになり、年金受給者の割合が増え、国全体の年金支給額が増加することが予想されます。

 そこで、年金財政全体の収入と支出のバランスを取る仕組みが導入されました。

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 これが、人口の高齢化による年金額の伸びを抑える仕組み「マクロ経済スライド」です。

年金額を調整する

 「マクロ経済スライド」は、将来世代が受け取る年金の給付水準を確保するため、年金額の伸びを抑える仕組みです。
(注:将来世代とは、これから生まれてくる子どもたち)

 保険料を納める働く人が減少すると、平均余命の伸び率を考慮して、年金額にマイナスの調整率が設定されます。
 年金額は賃金の伸びに応じて引き上げられますが、年金額の伸びからマイナスの調整率分を差し引きます。つまり、受給者がもらう金額は、実質的に目減りします。

 マクロ経済スライドによる調整を計画的に実施することで、保険料を支払う働く人の負担を増やさずに、将来世代の年金の給付水準を確保することができると考えられています。

マイナス調整分の繰り越し

 これまでは、デフレのときは年金額を引き下げないという決まりがありました。
 しかし、2019年からは、賃金が上がったときにまとめて調整することになりました。

 マイナスの調整ができなかった分は、翌年度に繰り越されます。そして、賃金が十分に上昇した時、年金額から当年度のマイナスの調整分と、繰り越されたマイナス調整分も差し引かれます。
 マクロ経済スライドのルール改正により、年金の目減りがさらに進むことになりました。

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公的年金のメリット

 年金は終身給付を約束しています。
 どんなに長生きしても、保険料の負担額を給付額が上回ろうと、ずっと年金は支払われます。

 65歳到達時点の平均余命を考えて、将来の生活設計を考えた時、平均的な人でも男性で20年以上、女性で25年以上ライフプランを設計する必要があります。

 長い余命を考えると、日本の保険会社のどの年金保険と比べても、公的年金が最も高利回りで安全有利な年金といえます。
 医療制度の充実により長寿化する中で、「長生き」する人にとって大きなメリットとなります。

社会の“セーフティネット”として

 次に、個人の損得勘定を離れて考えてみます。
 年金は、「老後の生活、障害、死亡」のリスクに対する保険の役目を果たす制度です。

 誰にでも、人生にはさまざまなリスクがあります。年をとって働くことができなくなる、事故や病気で働けなくなる、遺族を残して死亡してしまうなどです。

 個人では対応しきれないリスクに対して、世代を超えて社会全体で備える必要があります。
 年金には、みんながリスクを取って生きていくことができる“セーフティネット”の役割もあります。

次回は、「お金の不安編」 その11として「自助努力でそなえる」ことを考えます。


山木戸 啓治  Keiji Yamakido

<プロフィール>
上級生涯生活設計コンサルタント
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP(日本FP協会)
社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員

平成15年より、ファイナンシャル・プランナーに就任し、生涯学習センター・公民館・大学の公開講座などで生涯経済設計の講師を務め、平成16年度・17年度には福山大学経済学部客員教授を兼務すると共に、企業の退職準備ライフプランセミナー、及び地方公務員の退職準備・生活充実ライフプランセミナーなどで講演活動を行う。
平成22年7月に定年退職し、その後も継続してライフプランセミナーの講師として活動中。

山木戸先生へのお問い合わせは、こちらへ

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